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December 01, 2004

過剰情報の社会の経験の意味と意義

大学の喫煙室で、学部の3年生と雑談をしていたら、”自分探し”とか”自己実現”に焦っている。 何とならば、今日の様な情報が氾濫し、幾らでも、望めば吸収できる世の中は、昔と異なり、変化も早いが、情報収集も早くでき、早く成長できる、早く自分を探せる、早く自己実現が出来る世の中だ、だから、焦っている。・・・・・・・・との事。

確かに、マスコミに踊らされ、自分探し、自己実現等々のことで、無謀にも、種々の常識的準備もせずに、イラクに入り、常識的帰結として、殺された若者の記憶もまだ覚めやらぬ・・・・・・・・・。

経験とは、そのもつ意味について、年長者の為、及び、若者の為に、掘り下げてみたい。

1.脳科学と行動心理学の視点から見ると、文字からの理解と記憶は、言葉の言葉による記憶が理解と云う名の下になされる。 一方、経験は理解と記憶が、三次元的になされるが、更に、経験に伴う脳内での情動が、関係する危険の知識、快不快の認識記憶、感じた全てに関連して記憶されると理解して良いであろう。 

2.部下を育てていると、何故、こんな簡単な、冷静に考えれば、誰でも予見できる事を予見し、必要な対策を取らないのかと何度も思わされることが多い・・・・・俗に、”頭で解っていても体で理解していない”と云う事である。

3.一方、情報は、むしろ欲しい情報が入手できたとしても、人生に関係する事を、例え言葉だけであってもどれだけ、同様の経験がなくて、理解できるのであろうか???・・・・・・・・言葉は、その背景に言葉から受けるものは大きく異なる。 言葉は、例えば、”愛”といってもそれぞれの理解に大きく違いがある事を想定してみれば若者でもわかる筈だと思う。

4.人間と云う動物は、恐らく地球上で一番高等な動物であるが故に、所謂一人前の人間になるのに、他の動物の何十倍以上の年月を要する。 そして、発達の手順を見ると、最初は、何も出来ない赤ちゃんを充分甘えさせてあげて、愛着感情(Attachment)を与え、その存在を内在化して、他人の世界に踏み込み、何かあると家族に逃げて甘えて、再度勇気付けを行い行動を通して、一人で動けるようになる。 そして、青年期後期までには大人になる為に、
甘えを廃絶して、自立の道を歩む。 謂わば、散々甘やかし、その甘えを断つ、ある意味で、矛盾に満ちた経験を通過しなくては大人になれないプロセスにより成長する。

5.成長する為の過程においては、矛盾のない理論と説明を受けて、脳の中で、パターン化した体系を構築して、
大人として生きていく事は、あたかも矛盾との対峙出来る能力を養っていく事を強いられる。 そして、複雑な自体へ対応できる高等動物に成長していく。 参考までに、最新の臨床心理のほうでも、この矛盾または両義性(Ambivalent)の中でバランスを取ることが、むしろ、心を元気にするとの報告も在る。

6.複雑な社会で、生きていく為には、社会のメカニズムと人生のメカニズムを理解し、その各要素どうしの相関関係を先ずは理解して、更に各要素同士の相関関係が、必ずしも理論的に動かない事を見抜く経験=予知能力は理論ではなく経験が必要と云う事になる。 若い人も、冷静に自分自身の内面を見つめて欲しい。 自身の中に多くの矛盾するものが共存している事を認めざる得ないはずである。 その人間が作るのが人間社会である。 そこには当然矛盾で満ち溢れていて当然である。

7.人間が文字を取得する前に、またもっと前、つまり言葉を取得する前を想像して欲しい。 学習とは、生きる為の学習であり、人生のための学習であり、すべては経験を通じての学習であった。 言葉が出来、文字が出来たが、
これは知識の伝承は出来ても人生の知恵は体得するものであり、情報からは完全には体得できない。
つまり、知識と知恵の両方の取得を可能にしたのが高等動物の人間である。

結論としては、謂わば、前輪の二輪駆動の自動車であり、片方の前輪だけふかしても、堂々巡りしか起きない。
よって、古来、人間の知恵として、年長者を敬ってきた。 理論を行動に移せないのは理論を理解している事にはならない。 複雑性の高まった社会では、焦らなくてはならないのは、限られた人生の中で、情報=知識が増える分だけ、従前より多くの経験を積む必要があり、経験を通じて、つまり、触れ合う人を介して、知識を吸収していく知恵ではないだろうか・・・・・・・・

若者よ、焦って、自分探し・自己実現を考えずに、焦って、種々の経験を積み、関係する人間から知識を吸収しよう。

年長者よ、自分の経験を押し付けるのではなく、積極的に伝承しよう、その話が、言霊となり、若者の頭に残り、
気付きを早めるであろう。

複雑系への打開策は、関与者の能動的な参画と交流が必要になる・・・・・・・・・・・

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